食への加工

空豆(そらまめ)の食への加工

加工食品原料として、空豆(そらまめ)は1993年の輸入依存率が68.8%で、他の穀物と同様に輸入に依存し、輸入空豆が加工食品に広く使用されています。特に中国からの輸入が多く、青海省、甘粛省、山西省からのニンポウ、セイカイと生産地名を冠した種類が油菓子、豆菓子、醤油豆、あんに利用されています。一方、発酵食品としては中国の四川料理に利用される辛子味噌(豆板醤)の原料として空豆が利用されています。


揚げ菓子および焼き菓子

選別した空豆(そらまめ)を水に一夜浸漬し、吸水した空豆に隠し包丁を入れ水切り後、大豆油で揚げた後に油切りを行います。油で揚げることにより、種皮内部の子葉が反り返り、油が子葉の内部まで浸入しやすくなり、熱が通りやすくなっています。一部の種皮をはぎ取り帯状に種皮を残した後に、揚げた製品もあります。

脱皮した空豆を焙炒しまたは揚げ、砂糖、ノリなどをからめ焼き菓子、揚げ菓子になります。

あん(赤あん)

あんとは、デンプン含有量の多いマメ類を水中で煮熟して、そのデンプン粒を細胞内に保持したまま、糊化(こか)定着させた細胞デンプン粒の集合体を言います。通常は、マメ類を水浸、煮熟、すりつぶして篩い分け、水さらしして細胞デンプン粒を捕集、脱水したものを生あんと言い、そのままではほとんど味がないか、極めて淡泊な味をもつ程度で、しかも変敗しやすい特徴をもつものです。

空豆(そらまめ)などの雑豆類の子葉部は、デンプン粒子を包み込んだ小さな細胞の集合体で成り立っていますが、製あんとは、これらの細胞を健全な個々の粒子として捕集することです。雑豆類もそのまま吸水、膨潤、すりつぶすと、細胞が破壊され、「あん粒子」としてではなく、豆デンプンの粒子が得られることになります。

あんには、原料豆の種類により、小豆あん、赤あん、白あんがあり、空豆(そらまめ)は赤あんに加工されます。雑豆を利用して赤あんを作るとき、あんの色調を整えるため、天然色素による着色が行われています。


辛子醤(豆板醤)

湿式または乾式による脱皮後、水浸漬し、水切り後蒸煮します。小麦粉と混ぜた後に製麹、塩水仕込み、切り返しを行いながら発酵を経てティアントウバンジャンを作ります。それとは別に、刻んだトウガラシを塩水に漬け発酵させラアジャオジャンを作ります。このティアントウバンジャンとラアジャオジャンを合わせ、再度発酵させて豆板醤とします。

空豆を蒸煮せず、生の状態で製麹に使用するなど、豆板醤には多くの種類があり製造法も異なります。日本にもトウガラシと麹を混ぜて発酵させる信越地方の「かんざらし」がありますが、かんざらし(辛子味噌)は米麹を使用する点が異なり、上記のラアジャオジャンに相当します。


醤油豆

醤油豆は乾燥完熟空豆(そらまめ)を選別することで異物および石豆を除去し粒を揃えます。次の焙炒は、たんぱく質を変性させ、吸水を促進させる前処理工程であり焙炒香をつける最も重要な工程です。水と焙炒豆の温度差を利用するため、焙炒直後に水に入れると、石のもろい部分には亀裂が形成され、石が脆弱になります。

このことが応用され、水と接した空豆は急激に冷やされ、臍にある亀裂が焙炒で幅約100μmに広がり、この亀裂から水が種子内に浸入します。浸入した水は亀裂の形成された子葉と接触し、さらに亀裂を広げつつ水が内部へ浸入します。水浸漬により、豆の急激な温度降下が起き、種皮と子葉との空間が減圧します。その結果、減圧効果により臍の亀裂から水が浸入します。

原因は不明ですが、莢の中で胚珠が形成され種子になるまでに「石豆」になると、後の加工が困難になります。醤油豆の製造に際しても、石豆の混入防止は重要です。選別工程で以上に小さいサイズの豆は除去し、さらに焙炒豆の浸漬後に吸水していない豆を除去することで、石豆の混入を防止しています。

この時除去される石豆には2つのタイプがあります。1つ目のタイプは焙炒により、水の吸水力はありますが、上下2枚の子葉間隙が広がりすぎ、水に浮き、臍が水面より上に出るため、水分が十分種子内部に入りません。このタイプの石豆は浸漬時に落としぶたをすることで防止できます。

しかし、2つ目のタイプは上下2枚の子葉が何らかの原因で癒着し、焙炒しても子葉間隙ができず、種皮と子葉に十分な空間が形成されません。さらに、臍から入った水が上下2枚の子葉間には入らないために、子葉は吸水せず、以上に堅い石になります。この工程で水を吸水しない豆は、次の調味料み浸漬しても水と調味料の交換が行われないので、当然味も付きません。

正常に吸水した豆とタイプ1、2の石豆の主要な成分を比較すると、2つ目のタイプの石豆は子葉部の全窒素、全糖が少なく、カルシウムと鉄が多い傾向を示しています。ちなみに、醤油豆は香川県でしか生産していないことから、香川県の特産物となっています。しかも、県内でほとんど消費されてしまうそうです。