栄養と機能

空豆(そらまめ)の栄養

炭水化物

食物繊維は、最も少ないソラマメでも、炭水化物の約17%を占めており、高いものではベニバナインゲンのように約44%に達するものもあります。いずれも不溶性食物繊維が多く、比較的水溶性食物繊維の多いインゲンマメやソラマメでも総食物繊維に対する不溶性食物繊維の比率は83〜86%であり、その他雑豆では93〜96%が不溶性食物繊維で占められています。

糖類の全粒豆粉中4〜8%を占め、スクロースをはじめスタキオース、ラフィノースなどのオリゴ糖からなっています。スタキオース、ラフィノースなどのガラクトオリゴ糖は、腸内有用菌であるビフィズス菌の増殖活性を持つことが知られており、雑豆中糖類総量に対し、ソラマメでは約20%、アズキでは78%にも達しています。

以上のように雑豆炭水化物は、主成分であるでんぷんがエネルギー源として活用されると同時に、食物繊維補給源として、さらにはビフィズス菌増殖因子として、生体調節に関与する特徴をもちます。しかし、実際の調理上では、糖類は雑豆を可食化する過程で溶出流亡するので、ビフィズス菌増殖効果は期待できず、食物繊維による整腸効果を活用することになります。


たんぱく質

雑豆全成分の17〜26%を占めるたんぱく質は、煮豆やあんの製造上重要な役割を果たしているが、先の成分組成でも述べたように、良質のたんぱく源となっています。すなわち、必須アミノ酸量から考察してみると、アミノ酸総量に対し、必須アミノ酸合計量はおおむね35〜40%を占めており、小麦粉の26%よりかなり高くなっています。

また、小麦粉や精白米のそれぞれの必須アミノ酸量と比較してみても、いずれの雑豆類も2〜3倍の高い含量を示しており、とくにリジンは小麦粉の5.9〜8.2倍、精白米の5.2〜7.2倍もの高い値です。このようなことから、雑豆類は食生活上重要な植物性たんぱく質の供給源とされています。


脂質

雑豆類の脂質は、ヒヨコマメが5%程度含むほかは、いずれも1.3〜2.3%と少なく、栄養上とくに問題にはなりません。しかし構成脂肪酸をみると、必須脂肪酸であるリノール酸、リノレン酸が比較的多く、両者の含計量が少ないアズキでも、脂質に対して25%、ササゲでは37%を占めています。


無機成分とビタミン類

無機成分については、小麦粉や精白米の10倍ないしそれ以上含んでいるが、可食状態では水分を含むことと加工過程における流失により、かなり減少します。また、雑豆類はビタミンB1、B2、ナイアシンなどの供給源ともなりますが、無機成分の場合と同様、可食状態ではかなりの減少が認められています。



空豆(そらまめ)の中毒

ソラマメの食経験は古く、古代ギリシア時代にまで遡ることができます。それに伴ってソラマメ中毒の歴史も古く、ピタゴラスがその弟子にソラマメを食べることを禁じたという有名な話しがあります。ソラマメに含まれている毒性物質はバイシン(vicine)およびコンバイシン(convicine)によるもので、この両者はグルコースがβ結合した配糖体として存在しています。

これらには腸内細菌がもっているβ‐グルコシダーゼが働くと、ダイバイシンおよびイソウラシルに変化します。ソラマメ中毒では、症状として発熱、血尿、黄疸などを生じ、グルコース‐6‐リン酸脱水素酵素活性の低下、血球グルタチオン濃度の低下が起こり、血液の溶血性が高くなることが知られています。

このような作用も現在のところはっきりとしていませんが、配糖体としてバイシンあるいはコンバイシンによるよりは、グルコースが外されたダイバイシンおよびイソウラシルの作用と考えられています。

ソラマメを多食する地中海沿岸各地、北アフリカ、中央アジア各地ではよくこの中毒が起こりソラマメ中毒症(favism)として知られていますが、わが国ではあまり発症の報告がありません。恐らく品種によるバイシンなどの含有量の差異によるものでしょう。